予算実績管理(予実管理)を定着させるコツ

経理・財務

「今期の予算、結局どれくらい実績とズレたんでしたっけ」。先日、上司からこう聞かれて、恥ずかしながら答えに詰まってしまいました。期初にはあれだけ時間をかけて各部門とすり合わせ、丁寧に予算を組んだはずなのに、期中の振り返りをほとんどしていなかったのです。慌てて数字を突き合わせてみると、想定より大きくズレている項目がいくつもあり、しかもそのズレがいつから始まっていたのか、誰に確認すればよいのかすら分からない状態でした。

振り返ってみると、これは私だけの問題ではなく、経理・財務まわりの実務をやっている方なら一度は経験する「あるある」ではないかと思います。予算策定そのものには相応の工数と気合いをかけるのに、いざ期が始まると日々の伝票処理や月次決算に追われ、「予算と実績を比べて確認する」という地味な作業は後回しになりがちです。気づけば下期になって「そういえば今期の予算、ちゃんと見てましたっけ」となる。予実管理という言葉自体は多くの会社で使われていても、実際には形骸化しているケースが少なくないのではないでしょうか。

今回は、実際に月次の予実確認業務に携わってきた立場から、予算実績管理(予実管理)を一過性のイベントで終わらせず、日常業務として定着させるための実務上のポイントを整理してみたいと思います。

予実管理が「作って終わり」になりやすい理由

予実管理がうまく回らない会社の多くは、実は予算そのものの精度が低いわけではありません。むしろ、期中の振り返りを行う「仕組み」が用意されていないことが原因であるケースが多いように感じます。予算と実績を比較するための決まったフォーマットがなかったり、誰がいつ差異を確認するのかが明確でなかったりすると、忙しい月次決算の合間に予実確認の優先順位はどんどん下がっていきます。結果として、予算は期初に一度作られたきり、期末の総括のときに初めて実績と照らし合わせる、という運用になってしまうのです。これでは、期中に軌道修正のチャンスがあったとしても、それに気づくタイミングを逃してしまいます。

予実管理を定着させるための4つのポイント

フォーマットは「差異が一目で分かる」シンプルさを優先する

予実管理を継続させる上で、比較フォーマットの分かりやすさは想像以上に重要です。項目を細かく分けすぎたり、部門ごとに書式がバラバラだったりすると、担当者は数字を追うだけで疲れてしまい、肝心の差異分析まで手が回りません。予算額・実績額・差異額・差異率を並べ、差異の大きい項目が自然と目に入るように色付けや並び替えのルールを決めておくと、確認作業の負担がぐっと軽くなります。フォーマットを凝ったものにするより、毎月同じ形式で淡々と続けられることの方が、定着という観点では価値があると感じています。

月次決算のタイミングで予実会議を定例化する

次に効果的なのが、予実確認の場をあらかじめ会議体として組み込んでしまうことです。月次決算が締まった後の一定のタイミングに「予実確認会議」を定例で設定し、関係部署が参加する前提にしておくと、確認作業そのものが業務フローの一部として自然に回るようになります。誰かの気づきや意欲に頼って「今月は忙しいから来月まとめて見よう」という状態になると、あっという間に振り返りは行われなくなります。仕組みとして時間と場所を確保しておくことが、地味に見えて一番効果の大きい工夫だと感じています。

差異は金額だけでなく「一時的か構造的か」を記録する

差異が出た項目については、金額の大小だけを見て一喜一憂するのではなく、その要因が一時的なものか、それとも構造的なものかを関係部署にヒアリングし、記録に残すことをおすすめします。例えば、単発のキャンペーン費用による一時的な増加であれば来月以降は解消される見込みですが、人件費の恒常的な上振れのような構造的な要因であれば、下期以降の見通しにも影響してきます。この区別を記録しておくと、後で着地見込みを更新する際にも、どの数字を動かすべきかの判断材料になります。

予算は一度作ったら固定ではなく、着地見込みとして更新する

予算というと、期初に確定させたら期末まで変えないものというイメージを持たれがちですが、大きな環境変化があった場合には、期中に見直す柔軟性を持たせておくことも大切です。もちろん予算そのものを頻繁に書き換える必要はありませんが、通期の着地見込みは別途更新し、経営層への報告や下期の対策検討に使えるようにしておくと、予実管理が「過去の答え合わせ」で終わらず、これからの意思決定に活きる材料になります。

  • 予算と実績の比較フォーマットは、差異の大きい項目がすぐ分かるようシンプルに統一する
  • 月次決算のタイミングに合わせて予実確認会議を定例化し、振り返る場を仕組みとして組み込む
  • 差異は金額の大小だけでなく、一時的な要因か構造的な要因かをヒアリングして記録に残す
  • 予算そのものは固定しつつ、大きな環境変化があれば着地見込みを更新する柔軟性を持たせる

予実管理は、派手さのない地道な作業の積み重ねですが、仕組みとして定着させることができれば、期末になって慌てて数字を突き合わせるような事態は確実に減っていきます。まずは自社の予実確認が「イベント」になっていないか、一度振り返ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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