交際費と会議費、税務上の区分で総務・経理が迷うポイント

経理・財務

「この飲み会代、交際費ですか?それとも会議費ですか?」経理担当の後輩からこう聞かれて、正直に言うと即答できなかったことがあります。総務として日々の経費精算をチェックしている立場でありながら、いざ具体的な金額や場面を挙げられると、「うーん、これは微妙なラインだね」と唸ってしまう場面が、実務では意外と多いのです。

交際費と会議費は、どちらも取引先や社内との飲食・打ち合わせに関する費用という点では似ていますが、税務上の扱いはまったく異なります。交際費に区分されると、原則として法人税の計算上、経費として認められない(損金不算入)部分が出てくるのに対し、会議費であれば全額を経費として計上できます。この違いを知らずに、なんとなく前任者のやり方や感覚で仕訳を切り続けている会社も、まだまだ少なくないのではないでしょうか。

特に近年は、この交際費と会議費の境界線となる金額基準が改正され、以前の基準のまま運用してしまっているケースを社内でも目にしました。今回は、実際に経費精算の一次チェックを担当してきた立場から、交際費と会議費の区分の考え方と、実務で気をつけたいポイントを整理してみたいと思います。

交際費等の原則と、会議費として扱える基準

交際費は原則として全額が損金不算入

法人税法上、交際費等に該当する支出は、租税特別措置法第61条の4第1項により、原則としてその全額が損金不算入とされています。つまり、会社の会計上は費用として計上していても、法人税の申告にあたっては利益に加算し、税金の計算対象に含めなければならないということです。取引先との接待や贈答など、事業に関連する支出であっても、無条件に経費として認められるわけではない、というのがまず押さえておきたい大原則です。

1人当たり1万円以下の飲食費は交際費から除外

ただし、すべての飲食を伴う支出が交際費になるわけではありません。取引先などとの飲食であっても、参加者1人当たりの金額が一定額以下であれば、交際費等の範囲から除外され、会議費などとして全額を損金算入できる特例があります。この基準額が、2024年(令和6年)の税制改正で見直されました。2024年3月31日以前に支出した飲食費は「5,000円以下」が基準でしたが、2024年4月1日以降に支出する飲食費については「10,000円以下」に引き上げられています。基準額がほぼ倍になったことで、これまで交際費として処理していた飲食が、会議費として扱えるようになったケースも出てきているはずです。

決算期によっては新旧基準が混在することに注意

ここで実務上、特に気をつけたいのが決算期のずれです。3月末決算の会社であれば、事業年度の切り替わりと基準額の切り替わりのタイミングが一致するため、比較的分かりやすいのですが、それ以外の決算期の会社では、同じ事業年度の中に「5,000円以下」の旧基準が適用される期間(2024年3月31日以前の支出分)と、「10,000円以下」の新基準が適用される期間(2024年4月1日以降の支出分)が混在することになります。経費精算のワークフローやチェックリストに基準額を記載している場合は、支出日に応じてどちらの基準を適用するのか、担当者が迷わないよう明記しておくことをおすすめします。

中小法人向けの交際費特例と、実務での判断のコツ

年800万円の定額控除か、接待飲食費の50%か

資本金1億円以下の中小法人には、交際費等の損金算入について追加の特例が設けられています。具体的には、「年間800万円までを定額で損金算入できる」措置と、「接待飲食費に該当する金額の50%相当額を損金算入できる」措置のどちらかを、会社の状況に応じて選択適用できるというものです。飲食を伴う交際費の支出額が少ない会社であれば定額控除の枠内に収まりやすく、逆に接待の機会が多い会社では50%基準の方が有利になることもあります。どちらが有利かは会社ごとの支出状況によって変わってくるため、経理担当だけで判断せず、顧問税理士と相談しながら選択するのが安心です。

この特例には期限がある

この中小法人向けの特例は、恒久的な制度ではなく、適用期限が定められている点にも注意が必要です。今回の改正で、適用期限は2027年(令和9年)3月31日まで、3年間延長されました。期限が来るたびに延長されてきた経緯がある制度ですが、「延長されるはず」と思い込んで社内のルールを更新し忘れると、期限切れに気づかないまま処理を続けてしまうリスクがあります。総務・経理としては、決算のたびに「この特例はまだ有効か」を確認する習慣をつけておくと安心です。

迷ったときの社内での判断ルール

現場で交際費か会議費か判断に迷う場合、まずは「参加者1人当たりの金額」と「支出日」の2点を確認する運用にしておくと、担当者による判断のブレを減らせます。領収書やレシートに参加人数と支出日を記録してもらうルールを徹底し、金額基準を上回っている、あるいは接待としての性格が強い(取引先の歓迎・送別、贈答など)場合は交際費、社内外の打ち合わせに伴う実費的な飲食であれば会議費、という基本の切り分けを、経費精算システムのフォームや申請書のフォーマットに落とし込んでおくと、日々の処理がスムーズになります。

交際費と会議費の区分は、金額基準や特例の内容が税制改正のたびに変わりうる分野です。今回ご紹介した基準額や特例の内容は本記事執筆時点のものですので、実際の処理にあたっては、最新の制度を国税庁の公表資料や顧問税理士に必ず確認するようにしてください。

  • 交際費等は原則として全額が損金不算入となる
  • 1人当たりの飲食費が一定額以下であれば交際費から除外され、会議費等として全額損金算入できる
  • この基準額は2024年4月1日以降の支出分から「10,000円以下」に引き上げられた(それ以前は5,000円以下)
  • 決算期によっては、同一事業年度内に新旧の基準額が混在する場合があるため支出日の確認が必要
  • 中小法人には「年800万円の定額控除」または「接待飲食費の50%損金算入」を選択できる特例があり、適用期限は2027年3月31日まで延長されている
  • 最新の基準・特例の内容は国税庁の情報や顧問税理士への確認を欠かさないこと

金額基準ひとつで科目区分が変わり、税額にも影響してくるというのは、地味ながら総務・経理にとって気の抜けないポイントだと感じています。日々の領収書処理の中で「これは交際費、これは会議費」と機械的に仕分けるのではなく、基準が変わるタイミングをきちんと押さえておくことが、結局は一番の近道なのかもしれません。

※本記事は一般的な情報の紹介を目的としており、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

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