制度改正の話が出るたびに、同じ資料を探し直している気がしていました。官公庁のPDF、士業サイトの解説記事、前回の改正のときに自分で書いた運用メモ。どれも「読んだ覚えはある」のに、いざ現場から聞かれると、根拠の原文にたどり着くまでに毎回時間がかかります。
ここ半年ほど、この「調べ物」の部分だけをNotebookLMに任せるようになりました。結論から書くと、調べ物の入口としては手放せなくなった一方、期待して使って空振りした作業もいくつかあります。
この記事では、総務の実務で実際にやってみた範囲で、向いていた作業と、正直向いていなかった作業を書きます。なお私は現時点で、社内の機密資料はNotebookLMに入れていません。その判断の理由も後半に書きます。
NotebookLMは、ほかのAIと何が違うのか
ChatGPTやClaudeとの一番の違いは、自分が渡した資料しか読まないことです。ネット全体から答えを持ってくるのではなく、自分でノートブックに登録した資料(ソース)の範囲だけで回答します。
実務で効いてくるのは、その結果として回答に出典が付くことです。「どのソースのどのあたりに書いてあるか」が示されるので、原文に戻って確認できます。総務の仕事では「それはどこに書いてありますか」と聞かれる場面が多いので、ここが決定的に違います。
裏を返すと、資料に書いていないことは答えません。これは弱点というより設計思想で、後半の「向いていなかった作業」はほぼここから来ています。
なお名称について。公式のヘルプでは「Gemini Notebook」という表記も使われるようになっています(2026年8月時点では両方の名称が併記されています)。この記事では通りの良い「NotebookLM」で統一します。

向いていた作業①:法改正・制度改正の調べ物
いちばん効いたのがこれです。改正の話が出たら、まずその制度専用のノートブックを1つ作り、次のような資料をまとめて入れておきます。
- 官公庁が出している改正の概要資料・Q&A・ガイドライン(PDF)
- 士業サイトや公的機関の解説記事(URLでそのまま登録できます)
- 前回の改正のときに自分で書いた運用メモ(社外秘の情報を含まない範囲)
そのうえで、実際に投げているのはこういう質問です。1つ目は、社内規程への影響を洗い出すためのものです。
私は複数拠点があるサービス業の総務担当です。 登録した資料をもとに、今回の改正で就業規則の見直しが必要になりそうな 論点を挙げてください。 ・それぞれ、根拠となる記載箇所(どの資料のどこか)を必ず付ける ・資料に書かれていない論点は挙げない ・断定できないものは「要確認」と明記する
2つ目は、いつから何が変わるのかを整理するためのものです。改正物はスケジュールと経過措置がいちばん間違えやすいので、ここだけ切り出して確認しています。
適用開始日と経過措置だけを、日付順に一覧にしてください。 資料に書かれていない日付は書かないでください。 資料によって記載が食い違う場合は、両方を併記してください。
3つ目は、社内説明の下ごしらえです。総務が理解する内容と、現場に伝える内容は別物なので、要点を絞らせます。
この改正について、現場の管理者が「結局なにが変わるのか」だけを 知りたい場合の要点を3つに絞ってください。 専門用語は、社内の人が読んで分かる言い方に置き換えてください。
「資料に書かれていないことは書かない」と毎回入れているのは、余計な一般論を混ぜさせないためです。NotebookLMはもともとその傾向が強いのですが、明示しておくと回答がさらに固くなります。
ひとつだけ徹底しているのは、回答をそのまま社内資料にしないことです。あくまで「原文のどこを読めばいいか」を高速で見つけるための道具として使い、条文や適用日といった要になる部分は必ず原文で裏を取ってから社内に出しています。
向いていた作業②:サービス・製品の比較検討
複合機やシステムの入れ替えを検討するとき、各社のサービス資料や料金ページをまとめてソースに登録し、比較表を作らせる使い方も定着しました。
ここでのコツは、比較軸をこちらで決めてしまうことです。「比較して」とだけ頼むと、各社の資料が推している長所が並んだだけの表になります。営業資料は当然ながら自社に都合よく書かれているので、軸を相手任せにしてはいけません。
登録した各社の資料を、次の観点だけで比較して表にしてください。 ・初期費用 ・月額費用(税抜/税込がわかる場合は明記) ・最低契約期間 ・サポートの受付時間と、故障時の対応方法 ・解約・中途解約時の条件 資料に記載がない項目は、推測せず「記載なし」と書いてください。
この「記載なし」を埋めさせないのが肝で、実はそこに残った「記載なし」が、そのまま営業担当への質問リストになります。各社の資料を横に並べて読んでいた頃は、この抜けを見つける作業に半日かかっていました。
なお、見積書など取引先から個別に受け取った資料の扱いは別問題です。この点は後半の「入れる前に確認したこと」で触れます。
向いていた作業③:資格の勉強
これは「衛生管理者を受けたときにこれがあれば」と思った使い方です。公開されている試験の出題範囲、関係する法令の条文、自分がまとめたノートを1つのノートブックに入れて、苦手分野だけ一問一答を作らせます。
登録した出題範囲と条文から、「換気・作業環境測定」の分野に絞って 一問一答を10問作ってください。 ・正誤問題の形式で、解答と根拠になる条文を付ける ・ひっかけになりやすい数字(人数・回数・期限)を必ず入れる
内容を対話形式の音声にまとめてくれる機能もあり、通勤中に聞き流す用途にも使えました。ただし要約なので、細かい数字は原文で確認する前提です。
ひとつ注意しておきたいのは、市販のテキストや問題集をスキャンして読み込ませるのは避けたほうがよいということです。著作権の問題があるので、公開されている法令・公式の出題範囲・自分で書いたノートの範囲にとどめるのが無難です。
正直、向いていなかった作業4つ

① 最新情報の網羅
当たり前のようですが、実際に使うと何度かつまずきます。NotebookLMにとっては自分が入れた資料が世界のすべてなので、古い資料を入れたままにしていると、平気で古い前提の答えが返ってきます。
「最新かどうか」を判断するのは人間の側の仕事です。私は制度のノートには作成日をメモとして入れておき、改正の続報が出たら古いソースを削除するようにしています。
② 数字の集計・計算
表を読み込ませて合計を出させる、といった使い方は期待しないほうがいいと感じました。読み取り自体はできますが、桁や端数処理でずれることがあり、結局こちらで検算することになります。
集計は素直にExcelと、表計算が得意なAIに任せたほうが早いです。この使い分けについては「ClaudeでExcel集計を自動化する方法」に書いています。
③ ゼロからの文章作成
通知文や案内文のたたき台は作れますが、社内文書特有の言い回しに寄せる作業は苦手です。資料に忠実であろうとするぶん、文章としては固くなりがちなのだと思います。
私は「調べる」をNotebookLM、「書く」を別のAI、と分けています。書かせる側のコツは「総務のためのプロンプト作成のコツ」にまとめました。
④ 資料に書いていないことの相談
「一般的にはどう運用している会社が多いですか」といった相談には答えてくれません。これは正しい挙動なのですが、使い始めの頃は物足りなく感じました。相場観や他社事例を知りたいときは、そもそも別のAIに聞くのが正解です。
会社の資料を入れる前に、総務として確認したこと
ここが、総務担当としていちばん書いておきたい部分です。冒頭に書いたとおり、私は社内の機密資料をNotebookLMに入れていません。便利さは分かったうえで、順番として先に確認すべきことがあると考えているためです。
確認したのは次の5点です。
① どのアカウントで使うのか
個人のGoogleアカウントと、会社のGoogle Workspaceアカウントでは扱いが違います。公式のヘルプによれば、個人アカウントの場合、回答に高評価・低評価のフィードバックを送信したときに、その内容が人間のレビュアーによる確認の対象になることがあるとされています(フィードバックを送らない限り、基盤モデルの学習に直接使われることはないと説明されています)。
一方、Google WorkspaceやGoogle Workspace for Educationのアカウントでは、フィードバックを送った場合でも、アップロードした内容・質問・回答が人間のレビュアーに確認されることも、AIモデルの学習に使われることもないとされています。
つまり、業務の資料を扱うなら会社の組織アカウントで、というのが前提になります。個人アカウントで業務資料を扱うのは、この一点だけでも避けたほうがよい判断だと考えています。
② 退職・異動したときに、誰が消せるのか
総務の視点だと、実はここがいちばん怖いところです。個人アカウントで業務資料を扱っていると、その人が退職したあともノートブックは本人のアカウントに残り続け、会社側には削除もアクセス停止もできません。
紙やUSBメモリの持ち出しには厳しいルールがあるのに、AIツールのアカウントについては何も決まっていない、という職場は少なくないはずです。
③ 共有設定がどうなっているか
ノートブックは他の人と共有できます。便利な半面、共有の範囲を意識せずに使うと、意図しない相手に中身が見える状態になり得ます。共有するなら誰まで、というルールを先に決めておくべきところです。
④ 自社の生成AI利用ルールに合っているか
そもそも社内ルールで、どのツールに何を入れてよいかが決まっていなければ、個々の判断に委ねられてしまいます。ルール作りそのものについては「生成AIの社内利用ルール・ガイドラインの作り方」に書きました。
⑤ その資料は、自社だけの判断で入れてよいものか
見落としがちなのがこれです。取引先から受け取った見積書・提案書・仕様書には、秘密保持の取り決めがついていることがあります。自社の資料ではないものを、自社の判断だけで外部サービスにアップロードしてよいとは限りません。
この5点を踏まえると、私の結論は「公開情報の調べ物から始める」でした。官公庁の資料や各社の公開ページを読み解かせるだけなら、リスクは小さく、効果は分かりやすい。社内資料を入れるのは、組織アカウントとルールが整ってからで遅くありません。
私が決めている3つのルール
最後に、使い方の面で決めていることを3つだけ。
- ノートブックはテーマ単位で作り、使い回さない。関係のない資料が混ざると、回答が目に見えて濁ります
- ソースを入れる順番を決めておく。一次情報(官公庁資料)→解説記事→自分のメモ、の順に入れると、根拠がどれか分かりやすくなります
- 質問に「立場と用途」を書く。「複数拠点があるサービス業の総務担当として、現場向けの説明に使いたい」と添えるだけで、返ってくる粒度がかなり変わります
よくある質問
Q. 無料で使えますか?
基本的な機能は無料のGoogleアカウントで使えます。有料プランでは扱える量などが広がりますが、調べ物の用途なら無料でも十分に感触はつかめます。まずは公開資料を入れて試してみるのがおすすめです。
Q. ChatGPTやClaudeを使っていても、併用する意味はありますか?
あります。役割が違うためです。渡した資料の中だけで、出典つきで答えてほしいときはNotebookLM。資料の外の知識が必要なときや、文章を書かせたいときはChatGPTやClaude。私は「調べる」と「書く」で分けています。
Q. 社内規程を入れて「社内FAQ」にできますか?
技術的には可能で、活用事例としてもよく紹介される使い方です。ただ総務の立場で言うと、規程は改定が入るので古い版が残るリスクが常にあります。導入するなら、更新の担当者と手順を決めてからにすべきですし、その前にアカウントの種類の確認が先です。
Q. 音声で聞ける機能は仕事で使えますか?
長い資料の予習には向いています。移動中に全体像をつかんでおくと、あとで原文を読むのが速くなります。ただし要約なので、数字や期限といった細部は必ず原文で確認してください。
どの作業から手を付けるべきか、23項目で判定できます
毎月やっている作業を選ぶだけで、仕組みにできるものと手作業のまま残るものを判定するツールを置いています。判定の4つの軸もそのまま表示するので、納得できなければ読み替えてもらって構いません。入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。
まとめ
- NotebookLMは「自分が渡した資料だけを読む」AI。出典つきで返ってくるのが実務では効く
- 総務の仕事では、法改正の調べ物・サービスの比較検討・資格勉強の3つで特に役に立った
- 一方、最新情報の網羅・数字の集計・ゼロからの文章作成には向いていない
- 資料の外のことは答えないが、それは弱点ではなく設計。相場観を知りたいときは別のAIを使う
- 社内資料を入れる前に、アカウントの種類・削除権限・共有範囲・自社ルール・資料の持ち主の5点を確認する
- まずは公開情報の調べ物から始めれば、リスクは小さく効果は分かりやすい
正直に言うと、使い始める前は「資料を集めて入れる手間のほうが面倒なのでは」と思っていました。ただ、一度作ったノートブックはその制度が話題になるたびに開き直せるので、2回目以降が明らかに楽になります。いま追いかけている制度改正のノートを1つ作ってみる、くらいのところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報の紹介を目的としており、個別の制度対応や社内ルールの整備については、社会保険労務士等の専門家や自社の情報システム部門にご確認ください。また、各サービスの仕様やプライバシーに関する取り扱いは変更される場合があります。利用前に必ず公式の最新情報をご確認ください。
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