「人事・労務の実務をやっているから、社労士試験くらい楽勝だろう」と思って勉強を始めたら、思ったより苦戦した——そんな声を、受験仲間からもよく聞きました。私自身、総務部で人事・労務まわりの仕事を数年経験してから社労士試験の勉強を始めた一人です。
実務で日々扱っている内容と試験範囲には重なる部分も多く、最初は「知っている話ばかりだな」と余裕を感じる科目もありました。ところがいざ問題を解いてみると、微妙な数字の要件や、実務では意識したことのない分野でつまずくことが少なくありませんでした。
今回は、人事・労務の実務経験がある人が社労士試験に挑む際に、その経験をどう勉強に活かせるか、逆にどこを意識して補っていく必要があるかを、自分の受験経験を振り返りながら整理してみます。
社会保険労務士試験の特徴
社労士試験は、労働基準法や労働安全衛生法といった労働関係の法令から、健康保険・厚生年金保険・国民年金といった社会保険関係の法令まで、扱う科目数がとにかく多いのが特徴です。しかも科目ごとに独立した合格基準が設けられているため、一つの科目を得意にするだけでなく、全科目をまんべんなく仕上げる必要があります。実務で日常的に触れる分野もあれば、名前くらいしか聞いたことがない分野も混ざっているため、「実務経験があるから有利」と単純に言い切れないところが、この試験の面白さでもあり、難しさでもあると感じています。
実務経験を勉強に活かすポイント
① 実務で馴染みのある分野は理解が早い
入退社に伴う社会保険の手続きや、就業規則・労働時間管理、給与計算まわりの知識は、実務で扱っていると条文を読んだときの「入り」が全然違います。制度の背景や、なぜその手続きが必要なのかというイメージがすでにあるので、テキストの説明もすっと頭に入ってきますし、暗記も丸暗記ではなく理解を伴ったものになりやすいと感じました。
② 実務では触れない分野は独立して学習が必要
一方で、年金分野(老齢・障害・遺族に関する給付など)や労働経済・統計に関する内容は、日々の実務ではほとんど触れる機会がありません。私も最初はこの分野を「実務の延長」で理解しようとして、かえって遠回りをしてしまいました。ここは実務経験に頼らず、割り切って一から積み上げる前提で、独立した学習時間を確保した方が結果的に近道だったと感じています。
③ 条文の言い回しや細かい数字に慣れる必要がある
実務では「だいたいこういう場合はこう対応する」という運用ベースの理解で仕事が回ることも多いのですが、試験では条文の言い回しや、期間・日数・金額といった細かい数字の要件がそのまま問われます。実務感覚だけで「たぶんこうだろう」と選んでしまうと足をすくわれる問題が多く、条文そのものを丁寧に読み込み、数字を正確に押さえる訓練を別途行う必要があると痛感しました。
④ 働きながらの勉強は「すきま時間」と「実務とのリンク」が鍵
仕事をしながらの勉強は、まとまった時間を確保しにくいのが悩みどころです。私は通勤時間や昼休みなど、細切れの時間に一問一答形式の問題を解く形で勉強量を積み重ねていました。また、日中の実務で扱った手続きに関連する条文をその日のうちにテキストで確認するなど、実務と勉強をできるだけリンクさせることで、記憶の定着を図るようにしていました。
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まとめ
- 実務経験がある分野は理解が早く、勉強の土台になる
- 年金など実務で触れない分野は、実務経験に頼らず独立して学習する
- 条文の言い回しや細かい数字は、実務の運用感覚とは別に正確に押さえる
- 働きながらの勉強は、すきま時間の活用と実務とのリンクが効果的
- 実務経験は武器になる一方、過信せず弱点を客観的に把握することが大切
実務経験があると、社労士試験の勉強を有利に進められる部分は確かにあります。ただし、その経験に頼りすぎると、逆に伸び悩む科目が出てくるのも事実です。自分の実務経験がどの分野で強みになり、どの分野では通用しないのかを早めに見極め、バランスよく学習計画を立てることが、働きながらの合格への近道だと感じています。


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