「りんとさん、防災士の資格って、総務としても意味あるんですか?」先日、社内の防災訓練の準備をしていたときに、若手社員からこう尋ねられました。私はBCP(事業継続計画)の見直し担当を任されて数年になりますが、恥ずかしながら防災士については「地域の防災訓練でよく名前を聞く資格」という程度の認識しかありませんでした。
そこで一度、自分なりに防災士の資格内容を調べてみることにしました。すると、カリキュラムの中身が、日頃BCP担当として向き合っている業務内容とかなり重なっていることに気づきました。災害の基礎知識や避難所運営、応急救護、そしてBCPの考え方まで、体系的に整理された形で学べるようです。これまで自己流でつまみ食いのように身につけてきた知識を、一度きちんと整理し直すよい機会になるかもしれない、と感じたのを覚えています。
今回は、BCP策定の手順そのものではなく、BCP担当という立場の一個人が、防災士という資格を通じて何を得られるのか、という視点で整理してみたいと思います。資格取得を検討している総務担当の方の参考になれば幸いです。
防災士のカリキュラムと総務の危機管理業務の重なり
自助・共助・協働という考え方
防災士は、自分の身を自分で守る「自助」、地域や職場で助け合う「共助」、行政や専門機関と連携する「協働」を基本原則とする民間資格です。企業のBCPも、突き詰めると「自社をどう守るか」という自助の発想だけで語られがちですが、実際に大きな災害が起きたときには、地域やライフライン事業者、行政との連携なしに事業の継続も社員の安全確保も成り立ちません。防災士のカリキュラムは、この自助・共助・協働を軸に組み立てられているため、普段は自社の中だけで完結しがちな危機管理の視点を、地域全体に広げて考え直すきっかけになります。会社という組織の内側だけを見ていると忘れがちな「地域あっての事業継続」という前提を、あらためて意識させられる部分でもあります。
避難所運営や応急救護の実践知
カリキュラムには、避難所運営の考え方や応急救護の基礎なども含まれています。総務としてBCPの文書を整備していても、実際に負傷者が出たときにどう対応するか、集団生活の場でどんな運営上の配慮が必要かといった、実践的な知識までは手が回っていないことも多いのではないでしょうか。私自身、BCPマニュアルには「応急手当を行う」と一行書いてあるだけで、具体的に何をどう教育すればよいのか曖昧なままにしていた部分がありました。
BCPの考え方を体系的に学び直す
カリキュラムの中にはBCPそのものの考え方も含まれています。すでに自社のBCPに携わっている担当者であっても、体系立てて学び直すことで、自己流になっていた部分や、抜け落ちていた観点に気づく機会になります。
BCP担当が防災士を学ぶことで得られる3つの視点
社内で閉じない、地域とつながる防災の視点
BCP担当の仕事は、どうしても「自社の事業をどう継続するか」という内向きの視点になりがちです。防災士の学習を通じて地域防災の考え方に触れると、近隣の避難所や地域の防災組織、取引先や近隣事業者との連携など、社外との接点も含めて危機管理を捉え直す視点が得られます。
応急救護など「体で覚える」スキル
資格の学習には、座学だけでなく実技を伴う内容も含まれているようです。書類の上で「応急手当ができる体制にする」と定めるのと、担当者自身が実際に手を動かして体で覚えているのとでは、いざというときの対応力がまったく違います。日頃デスクワークが中心の総務担当にとって、こうした実践的な学びは新鮮な経験にもなります。
自社BCPの穴に気づくきっかけ
学習を進めていくと、備蓄品の考え方、避難経路の設計、安否確認体制のあり方など、さまざまな論点に触れることになります。その過程で、「そういえば自社の備蓄品は消費期限の管理ができているか」「安否確認の体制は本当に全社員をカバーできているか」といった、自社のBCPの不足点にふと気づかされる場面が出てきます。資格取得そのものよりも、この気づきこそが、BCP担当個人にとって一番の収穫かもしれません。実際に自分が学んだ内容を一つずつ自社に当てはめて考えてみるだけでも、既存のBCP文書を見直すヒントは意外なほど多く見つかるものです。
なお、資格の認証団体や取得要件、研修の内容・日数、受講にかかる費用などは変更されることもあるため、正確な情報は必ず認証団体の公式サイトで最新のものを確認してください。
- 防災士は、自助・共助・協働を基本に地域や職場の防災力向上を目指す民間資格
- カリキュラムは災害の基礎知識、避難所運営、応急救護、BCPの考え方など総務の危機管理業務と重なる
- 学ぶことで、自社の中だけで閉じない地域防災の視点が得られる
- 応急救護など、実践的なスキルを体で身につけられる
- 学習の過程で、自社BCPの備蓄・避難経路・安否確認体制などの不足点に気づくきっかけになる
- 取得要件や研修内容、費用などの詳細は認証団体の公式サイトで最新情報を確認する
BCP担当として日々の業務に追われていると、資格取得のための時間を確保するのはなかなか難しいものです。それでも、一人の学習者として学び直す経験は、社内文書を整備するだけでは得られない気づきを与えてくれるように思います。もし今、BCP担当として少し行き詰まりを感じているなら、資格そのものを目的にするのではなく、学びのプロセスを自社の防災力を見直すきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。担当者一人の小さな学び直しが、いざというときの会社全体の対応力につながっていくのだと思います。
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