月次決算チェックリスト(Excel配布)|日程軸で並べた29項目と、実際に効いた3つ

経理・財務

月次決算が遅れる理由を、長いあいだ「処理が難しいから」だと思っていました。実際に手を動かしてみると、難しい処理で止まっていた時間はごくわずかでした。

止まっていたのは、誰かの返事を待っている時間と、差し戻しでもう一度やり直す時間です。この2つを削る順番でチェックリストを組み直したところ、締めの体感がはっきり変わりました。

この記事では、複数の拠点を持つ会社で月次決算を回してきた立場から、日程軸に並べたチェックリスト本体と、実際に効いた工夫・効かなかった工夫を書きます。記事末尾でExcel版も配布しています。

月次決算が遅れる原因は、3つしかない

何年か観察して、遅れる原因はだいたいこの3つに集約されると考えるようになりました。

① 待ち — 自分の手が空いているのに進まない

請求書が届かない。「この費用は何ですか」の返事が来ない。承認が下りない。経理の作業ではなく、他人の作業を待っている時間です。ここが最も長く、そして最も見えにくい。

対策は「待ちを締め日より前に前倒しする」ことに尽きます。締めてから聞くのではなく、締める前に聞き終えておく。チェックリストを日程軸で組む理由はここにあります。

② 戻り — 一度やった作業をもう一度やる

小さなズレを「あとで確認しよう」と後回しにすると、締め日直前にまとめて発覚します。そのときには、どの伝票が原因かを探すところからやり直しになります。

違和感に気づいた時点で潰すのが、結局いちばん早い。1件ずつなら5分で済むものが、10件たまってから見ると半日かかります。

③ 突合の後回し — 最後に大きく崩れる

部門別・拠点別の数字を扱っていると、全社合計と部門別合計がずれていることが最後に判明する場面があります。ここで崩れると、全部門をさかのぼることになります。

突合は最後の儀式ではなく、途中に何度か挟むもの——という考え方に変えてから、手戻りがはっきり減りました。

月次決算チェックリスト(日程軸)

ここからが本体です。「何をするか」ではなく「いつまでにするか」で並べています。自社の締め日に合わせて日付を読み替えてください。

A. 月中(締め日の前・週1回)

ここでやることが、締め後の作業量を決めます。月次決算の勝負は、実は締める前についています。

  • A-1 未処理の請求書・領収書がたまっていないか、週1回まとめて確認する
  • A-2 用途が読み取れない経費申請を、その週のうちに本人へ確認する(締め後に聞くと必ず待たされる)
  • A-3 仮払金・仮受金のうち、精算が滞っているものを一覧で確認する
  • A-4 前月からの繰越項目(未払費用・前払費用など)の計上漏れを確認する
  • A-5 今月だけの特殊な取引(新規契約・解約・設備の取得や除却)を把握しておく
  • A-6 経費精算の締切を、締切日の2〜3営業日前に一斉通知する
  • A-7 月末が土日祝にあたる月は、支払・入金の実行日がずれることを先に確認する
  • A-8 前月の決算で時間がかかった箇所を1つ選び、今月は先に手を付けておく

A-2が、この表でいちばん効く項目です。「これ何の費用ですか」の確認は、締めてから始めると相手の都合に完全に依存します。月中に聞いておけば、返事を待つ時間が締め作業の外に出ます。

B. 締め日〜翌1営業日

この段階では「集める」ことに専念します。数字の精査はまだしません。

  • B-1 経費精算・立替金の申請がすべて出そろっているか確認する(未提出者に個別に催促)
  • B-2 売上の計上漏れがないか、特に月またぎの取引を確認する
  • B-3 仕入・外注費の計上漏れがないか、請求書の未着分を確認する
  • B-4 現金・預金の残高が、実際の残高と一致しているか照合する
  • B-5 クレジットカード・電子マネーの利用明細を取り込む
  • B-6 未着の請求書について、金額の見込みが立つものは未払計上の対象として控えておく
  • B-7 締切を過ぎた申請の扱いを、ルールどおりに処理する(なし崩しにしない)

B-2の「月またぎ」は、検収日と請求日がずれる取引で起きます。月末3日間と月初3日間の取引だけを抜き出して見ると、効率よく見つかります。

C. 翌2〜3営業日(精査)

ここで初めて数字を見ます。全部を見るのではなく、異常値だけを見ます。

  • C-1 経費科目ごとに前月比を出し、大きく動いた科目だけ中身を見る
  • C-2 同様に前年同月比を見る(季節性のある費用は前月比では異常に見えないため)
  • C-3 金額がゼロの科目がないか確認する(計上漏れは「増えた」ではなく「消えた」形で出る)
  • C-4 消費税の区分(課税・非課税・不課税)に誤りがないか、金額の大きい取引から確認する
  • C-5 適格請求書(インボイス)の登録番号の有無で処理が分かれる取引を確認する
  • C-6 部門別・拠点別の配賦計算が、今月の実績値で更新されているか確認する
  • C-7 減価償却費・引当金など、毎月定額で計上するものが漏れていないか確認する
  • C-8 前月に修正した箇所が、今月も同じ誤りを繰り返していないか確認する

C-1とC-3はセットで使ってください。ミスは「不自然に増えた」形でも出ますが、計上漏れは「あるはずのものがゼロ」という形で出ます。増えた側だけ見ていると、後者を丸ごと見落とします。

D. 締める前の最終確認

  • D-1 貸借対照表の借方・貸方が一致しているか
  • D-2 部門別・拠点別の合計が、全社合計と一致しているか
  • D-3 仮払金・仮受金の残高が、想定どおりの内訳になっているか
  • D-4 前月末の残高と、今月の期首残高が一致しているか
  • D-5 損益の数字を見て、自分で理由を説明できない増減が残っていないか
  • D-6 報告先に出す前に、前月の報告資料と並べて見比べる

D-5が最後の関門です。数字が合っていることと、その数字を説明できることは別です。説明できない増減が残ったまま報告に出すと、聞かれた瞬間に差し戻しになり、結局もう一度開くことになります。

実際にいちばん効いた3つ

上のリストは項目数が多いので、どれか3つだけ選ぶなら、という順に並べます。

① 用途不明の経費を、締める前に片づける(A-2)

締め作業で最も長く止まっていたのは、仕訳でも突合でもなく「これ何の費用ですか」の返事待ちでした。

効いたのは、申請フォーマット側に用途を一言書く欄を必須で足したことです。人に覚えてもらうのではなく、書かないと出せない形にする。これだけで、確認そのものが発生しなくなりました。経費精算のルールの作り方でも書きましたが、判断はフォーマット側に持たせるほうが確実です。

② 部門別合計と全社合計の突合を、途中にも挟む(D-2)

最後にだけ突合していた頃は、ずれが見つかった時点で全部門をさかのぼる羽目になっていました。

Cの精査に入る前に一度、締める前にもう一度。2回に増やしただけで、ずれた場合の探索範囲が半分になります。手間は数分です。

③ 前月に時間がかかった箇所を、翌月は先にやる(A-8)

毎月同じ場所で詰まっていることに、案外気づきません。決算が終わった直後に「今月いちばん時間がかかった作業」を1行だけメモするようにしました。

3ヶ月分たまると、詰まる場所は毎回ほぼ同じでした。分かってしまえば、翌月はそこから先に手を付けられます。

効かなかった工夫も書いておきます

うまくいった話だけだと役に立たないので、外したものも残しておきます。

× 全項目に担当者名と期限を振った

きちんと管理しようとして、チェックリストの全項目に担当と期限を書き込んだことがあります。更新が追いつかなくなって、2ヶ月で使われなくなりました。人事異動や繁忙で担当が動くたびに、表のメンテナンス自体が仕事になります。

いまは担当を書くのは他部署にお願いする項目だけにしています。自分たちの中で回る項目に担当名は要りませんでした。

× 締切を1日前倒しした

早く終わらせたい一心で、経費精算の締切を1日前倒ししたことがあります。結果は、締切を過ぎた申請が増えただけでした。

日程を詰めるのではなく、待ちの発生する場所を前に出す(A-2)。同じ「前倒し」でも、こちらのほうが機能しました。

担当が代わっても回るようにする

チェックリストの本当の目的は、早く終わらせることそのものより「誰がやっても同じ精度で終わること」にあります。

  • 順番を固定する … 毎月同じ順で確認すれば、飛ばした項目に気づきます
  • 「なぜ見るのか」を1行添える … 理由が書いていない項目は、意味が分からないまま形だけ残り、いずれ飛ばされます
  • 年1回、削る側の見直しをする … 項目は放っておくと増えます。増えたリストは読まれません
  • 実際にずれた月の記録を残す … 「なぜこの項目があるのか」の最良の説明になります

項目を足すのは簡単ですが、削るのは決断が要ります。見直しの時間は、足すためではなく削るために取ったほうがうまくいきました。

チェックリストをダウンロード

この記事のA〜Dをそのまま使えるExcelファイルにしています。無料です。自社の締め日に合わせて日付欄を書き換えてお使いください。

📄 月次決算チェックリスト(Excel)をダウンロード

それでも時間がかかる場合(PRを含みます)

チェックリストを回してもなお時間がかかるなら、削るべきは確認作業ではなく入力そのものかもしれません。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めれば、Bの「集める」段階が丸ごと短くなります。

法人の月次決算を見据えるなら、弥生会計 Nextマネーフォワード クラウド会計のように、明細の自動取込や部門別集計に対応したものが選択肢になります。

選ぶときは、いま何にいちばん時間を使っているかを先に数えてください。入力に時間がかかっているのか、確認に時間がかかっているのか、待ちに時間を取られているのかで、選ぶべきものが変わります。待ちが原因なら、ソフトを入れても解決しません。

※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれます。

よくある質問

Q. 月次決算は何営業日で終わらせるのが目安ですか?

会社の規模と拠点数によるので、一般的な日数を挙げてもあまり意味がありません。それより自社の「いま何営業日か」を測るところから始めるのをおすすめします。測っていないと、短くなったかどうかも分かりません。

Q. どこから手を付ければいいですか?

A-2(用途不明の経費を締める前に確認する)を1ヶ月試すのが、いちばん手間が小さくて効果が見えやすいと思います。

Q. 一人で経理をしています。それでもチェックリストは要りますか?

一人のときほど要ります。自分しか知らない状態は、休めない状態と同じです。休んだ月に誰かが開けることが目的だと考えると、書く内容も変わってきます。

Q. 項目が多くて全部は回せません。

A-2・D-2・A-8の3つだけで始めてください。全部を回すことより、3つが毎月確実に回ることのほうが効きます。

Q. 数字が合わないとき、どこから探しますか?

まず部門別合計と全社合計を突合して、どの部門でずれているかまで絞ります。いきなり伝票を1枚ずつ見ると時間がいくらあっても足りません。範囲を半分ずつ狭めていくのが結局いちばん早いです。

※税務上の取り扱いや会計処理は、業種・取引形態により異なります。個別の判断は税理士等の専門家にご確認ください。

どの作業から手を付けるべきか、23項目で判定できます

毎月やっている作業を選ぶだけで、仕組みにできるもの手作業のまま残るものを判定するツールを置いています。判定の4つの軸もそのまま表示するので、納得できなければ読み替えてもらって構いません。入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。

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まとめ

  • 月次決算が遅れる原因は「待ち」「戻り」「突合の後回し」の3つ。難しい処理で止まっているわけではない
  • チェックリストは「何をするか」ではなく「いつまでにするか」で並べる
  • A. 月中にやることが、締め後の作業量を決める。勝負は締める前についている
  • B. 締め直後は集めることに専念し、数字の精査はしない
  • C. 精査では全部を見ず、前月比・前年同月比の異常値だけを見る。計上漏れは「ゼロ」の形で出るので、増えた側だけ見ない
  • D. 最終確認で、部門別合計と全社合計を突合する。突合は最後だけでなく途中にも挟む
  • 3つだけ選ぶなら、用途不明の経費を締める前に片づける・突合を2回にする・前月詰まった箇所を先にやる
  • 担当者名と期限を全項目に振るのは失敗した。更新できないリストは使われなくなる
  • 締切の前倒しも失敗した。詰めるべきは日程ではなく待ちの発生位置

月次決算は、毎月同じことを繰り返す仕事です。だからこそ、1ヶ所直すと来月も再来月も効きます。今月いちばん時間がかかった作業を1行メモするところから始めてみてください。

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