ITパスポート、総務・経理担当が学ぶ意味

資格・勉強法

「りんとさん、総務や経理でもITパスポートって取る意味あるんですか?」先日、経理から異動してきたばかりの後輩にこう聞かれました。彼女いわく、資格取得の推奨リストに「ITパスポート」という文字を見つけたものの、てっきりシステム部門やエンジニア向けの資格だと思っていて、なぜ自分に関係あるのか分からなかったとのことでした。

私自身、数年前まで同じように考えていました。ところが、勤怠管理システムをクラウド型に切り替える検討を任されたときや、取引先を装った不審メールが社内で見つかった際の対応にあたったときなど、「IT」という言葉が総務・経理の日常業務に当たり前のように入り込んでいることを実感する場面が増えてきました。ベンダーの提案書に出てくる「SaaS」「二段階認証」「バックアップ」といった言葉の意味を、なんとなく分かった気になっていただけだったと気づかされたのです。

そこで一念発起して受けてみたのがITパスポートでした。今回は、実際にサービス業の会社で総務・経理業務に携わってきた立場から、ITパスポートがどんな資格なのか、そして専門のIT部門ではない管理部門の人間がこれを学ぶ意味について、自分の経験を交えて整理してみたいと思います。

ITパスポートとは、どんな試験か

経済産業省が認定する国家資格

ITパスポートは、経済産業省が認定するIT系の国家資格で、情報処理推進機構(IPA)が実施しています。「ITを利活用するすべての社会人・学生が備えておくべき基礎知識」を問う試験と位置づけられており、エンジニアやシステム部門の担当者に限らず、幅広い職種の人が対象になっている点が特徴です。私が受験したときも、会場には営業や事務職と思われる方が多く見られ、必ずしもIT専門職だけが受ける試験ではないのだと実感しました。

「経営」「IT」「セキュリティ」を横断する出題範囲

出題範囲は、経営戦略や法務・会計といった企業活動全般に関する知識(ストラテジ系)、システム開発やプロジェクトマネジメントに関する知識(マネジメント系)、そしてネットワークやデータベース、情報セキュリティといった技術的な知識(テクノロジ系)の大きく3つの分野にまたがっています。具体的な出題数や合格率、受験料などは年によって見直されることがあるため、この記事では数字には触れませんが、気になる方はIPA(情報処理推進機構)の公式サイトで最新情報を確認していただくのが確実です。

総務・経理がITパスポートを学ぶ意味

クラウドサービス選定やDX推進の場面で

総務や経理の仕事は、もはやIT抜きには成り立ちません。勤怠管理、経費精算、契約書の電子化、社内チャットツールの導入など、業務システムをクラウドサービスに切り替える検討は、管理部門が主体となって進めることが多いはずです。その際、ベンダーから提示される見積もりや提案の中身を正しく理解できるかどうかで、比較検討の質が大きく変わってきます。ITパスポートで扱う「クラウドコンピューティング」「SaaS・PaaS・IaaS」といった基礎知識を押さえておくと、担当者から説明を受けるときの理解度が明らかに違ってきますし、稟議書を書く際の説明にも説得力が増します。

情報セキュリティ対応の「共通言語」になる

不審なメールへの対応や、パスワード管理のルール整備、個人情報を扱う業務フローの見直しなど、情報セキュリティに関わる相談ごとは、総務・経理に自然と集まってきます。こうした場面で、システム部門やベンダーの担当者と話をするときに、専門用語の意味がまったく分からないままだと、話についていくだけで精一杯になってしまいます。ITパスポートで学ぶセキュリティの基礎知識は、専門家と対等に会話をするためというよりも、相手の説明を正しく理解し、社内の他部署にかみ砕いて伝え直すための「共通言語」として役立つという感覚が近いように思います。

丸暗記より、自部署のシステムと結びつけて学ぶ

私が勉強していて感じたのは、専門用語をただ丸暗記しようとすると、驚くほど頭に残らないということです。それよりも、テキストに出てきた言葉を、自分の会社で実際に使っているシステムやセキュリティ対策に置き換えながら読み進めると理解が格段に深まりました。たとえば「アクセス権限」という言葉が出てきたら、自社の経費精算システムで誰がどこまで承認・閲覧できる設定になっているかを思い浮かべる、「バックアップ」が出てきたら、自部署のファイルサーバーやクラウドストレージの保存ルールを思い出してみる、といった具合です。抽象的な定義を覚えるのではなく、日々の業務の景色と結びつけることで、「あ、これはあのことか」という納得感を持って読み進められるようになりました。

資格取得そのものより、実務に活かす姿勢が大切

もちろん、ITパスポートに合格したからといって、その日から情報システムの専門家になれるわけではありません。ただ、経営・IT・セキュリティを横断的に学ぶ機会は、総務・経理のように様々な部署や外部ベンダーとの橋渡し役を担う立場にとって、決して遠回りではないと感じています。資格の勉強を通じて得た基礎知識を土台に、実務の中で分からないことがあれば都度調べたり、詳しい人に質問したりする姿勢を持ち続けることの方が、合格そのものより大切なのかもしれません。

  • ITパスポートは経済産業省認定の国家資格で、IT専門職に限らず幅広い社会人を対象にしている
  • 出題範囲は経営・マネジメント・技術の3分野にまたがり、総務・経理の実務とも接点が多い
  • クラウドサービス選定やDX推進の場面で、提案内容を正しく理解する助けになる
  • 情報セキュリティ対応では、専門部署やベンダーとの「共通言語」として役立つ
  • 用語の丸暗記より、自部署のシステムと結びつけて学ぶと理解が深まりやすい
  • 出題数・合格率・受験料などの最新情報はIPA公式サイトで確認するのが確実

後輩に「総務や経理でもITパスポートを取る意味があるか」と聞かれたとき、今なら私は迷わず「あると思う」と答えられます。IT専門部署でなくても、いえ専門部署でないからこそ、経営とITとセキュリティを俯瞰して学べるこの資格は、日々の業務を少し違う角度から見直すきっかけになってくれるはずです。

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