退職者対応の実務チェックリスト

人事・労務

「Aさん、来月末で退職することになりました。事務手続き、何をすればいいですか?」ある日、後輩からそう聞かれて、恥ずかしながら一瞬言葉に詰まってしまったことがあります。入社時の手続きなら何度も経験していたのに、退職時の手続きについては、断片的な知識しか持ち合わせていなかったのです。

慌てて総務の引き出しから前任者が残したメモを引っ張り出し、離職票の書き方や社会保険の手続きを一つずつ確認しながら対応したのを覚えています。結果的には期限内に処理できましたが、あのときにきちんとしたチェックリストがあれば、もっと落ち着いて動けただろうと思います。

退職者対応は、入社手続きに比べて社内で情報共有される機会が少なく、担当者が交代するたびに「これはどうするんだっけ」となりがちな業務だと感じます。しかも、対応する行政機関や提出書類が複数にまたがっているため、一つの手続きに気を取られていると、別の手続きの期限をうっかり忘れてしまう、ということも起こりやすいと思います。今回は、実際に退職者対応の実務に携わってきた立場から、手続きの流れと見落としやすいポイントを整理してみます。

退職手続きの流れを時系列で整理する

最終出社日までに確認しておきたいこと

本人から退職の申し出を受けたら、まず退職日と最終出社日を確認します。残っている有給休暇を消化してから退職日を迎えるケースも多く、最終出社日と退職日(社会保険などの資格喪失日に関わってくる日)がずれることは珍しくありません。この二つの日付を混同すると、後続の手続き全体がずれてしまうため、最初の段階できちんと確認しておくことが大切です。

貸与品の回収

社員証、貸与PC、社用携帯、鍵、制服など、会社から貸し出していたものを一覧化して回収します。貸与品の種類や管理方法は会社によって異なりますが、退職者本人に一覧を渡して自己申告してもらう方法と、部署の管理台帳と突き合わせる方法を組み合わせて漏れを防いでいる会社が多いようです。返却が最終出社日以降にずれ込む場合は、返却期限と方法をあらかじめ本人と取り決めておくと安心です。

社会保険・雇用保険の資格喪失手続き

健康保険と厚生年金については、資格喪失届を年金事務所(または加入している健康保険組合)に提出します。雇用保険についても、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出する必要があります。どちらも提出期限が定められているため、退職日が確定した時点で社内のスケジュールに組み込んでおくと、直前になって慌てずに済みます。提出先が年金事務所とハローワークの二か所に分かれる点も、担当者が混同しやすいポイントの一つだと感じています。

離職票の発行

本人が離職票の交付を希望する場合や、年齢などの事情で交付が必須となる場合は、雇用保険の資格喪失手続きに合わせて離職票の発行手続きを行います。転職先が決まっている退職者から「離職票は不要です」と言われることもありますが、後になって必要になるケースもあるため、希望の有無はメールなど記録に残る形で確認しておくと、後日のトラブルを避けやすくなります。

源泉徴収票の交付

退職者には、その年の在籍期間分の給与に対する源泉徴収票を交付します。転職先での年末調整や、本人が確定申告を行う際に必要となる書類なので、退職後できるだけ早いタイミングで渡せるよう、給与計算のスケジュールと合わせて準備しておくとよいと思います。

見落としがちなポイント

有給休暇の未消化分の取り扱い

退職時点で有給休暇が残っている場合、退職日までに消化してもらうのか、買い取りのような対応をするのか、あるいは特に対応しないのか、会社の規程や実務によって扱いが分かれます。本人の希望と会社の規程を突き合わせて、退職前のできるだけ早い段階で方針をすり合わせておくことが望ましいです。

法定三帳簿の保存期間は退職日が起点になる

労働者名簿をはじめとする法定三帳簿は、保存期間の起算日が退職・死亡・解雇の日とされています。退職に関する一連の手続き自体はその都度完了していくものですが、記録の保存管理という観点では、退職日を正確に記録しておくことが後々の管理のしやすさにつながります。退職者が増えてくると、誰の記録がいつまで保管対象になっているのか把握しづらくなってくるため、退職日を起点に管理台帳などへ落とし込んでおくと安心です。手続きが一区切りついた後も、いつまで記録を保管しておくべきかを意識しておくとよいでしょう。

退職に関する実務は多岐にわたるため、対応の抜け漏れを防ぐ意味でも、一連の流れを簡単にまとめておきます。

  • 退職の申し出を受けたら、まず退職日と最終出社日を確認する
  • 社員証・貸与PC・鍵など貸与品を一覧化して回収する
  • 健康保険・厚生年金、雇用保険それぞれの資格喪失届を期限内に提出する
  • 離職票の交付希望の有無を記録に残る形で確認し、必要に応じて発行手続きを行う
  • 源泉徴収票を交付する
  • 有給休暇の未消化分の取り扱いを会社の規程に沿って確認する
  • 法定三帳簿は退職日を起算日として保存期間を管理する

退職手続きは、入社時のように「これから一緒に働いていく」という前向きな空気の中で進むものではないため、どうしても後回しになりやすい業務だと感じています。ただ、一つひとつの手続きには期限があり、対応が漏れると本人にも会社にも思わぬ迷惑がかかってしまいます。次に退職者が出たときにも落ち着いて対応できるよう、自分なりのチェックリストを普段から見直しておきたいと思っています。

※本記事は一般的な情報の紹介を目的としており、個別の判断については社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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