労働条件通知書と雇用契約書、実務での使い分け|人事・労務の実践ノウハウ

人事・労務

「これって雇用契約書ですか?それとも労働条件通知書ですか?」新しく採用担当になったスタッフから、入社手続きの書類を渡した際にこう聞かれたことがあります。恥ずかしながら、当時の私も「まあ、だいたい同じようなものです」としか答えられませんでした。

バックオフィス業務では、入社時に交付する書類として「労働条件通知書」と「雇用契約書」のどちらか、あるいは両方を使っている会社が多いと思います。ただ、両者の法的な位置づけの違いを整理せずに、なんとなく前任者から引き継いだ書式をそのまま使い続けているケースも少なくないのではないでしょうか。

今回は、実際に採用・入社手続きの実務に携わってきた立場から、労働条件通知書と雇用契約書の違いと、現場での使い分け・運用のポイントを整理してみます。

労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書は、労働基準法に基づき、会社(使用者)が労働者に対して労働条件を明示するために交付する書面です。あくまで会社側から労働者への一方的な「通知」であり、労働者の署名や合意は法律上の必須要件ではありません。一方、雇用契約書は、会社と労働者が労働条件について合意したことを示す「契約書」であり、双方の署名・押印を伴うのが一般的です。つまり、通知書は義務としての明示行為、契約書は合意の証拠という性格の違いがあります。とはいえ実務上は、この二つを別々の書面で用意するのではなく、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」といった形で一枚の書式にまとめ、会社からの明示と労働者の合意署名を同時に済ませる運用も広く行われています。事務負担を考えると、こうした兼用書式は現実的な選択肢の一つといえるでしょう。

実務での使い分け・運用のポイント

① 明示すべき労働条件の項目をもれなく確認する

労働条件通知書には、契約期間、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、賃金、休日・休暇、退職に関する事項など、法令で明示が求められる項目を漏れなく記載する必要があります。明示すべき事項が追加される法改正が行われることもあるため、「以前からのひな形をそのまま使い回す」のではなく、定期的に最新の様式・記載例を確認し、自社の書式が現行のルールに沿っているかをチェックする習慣を持つことをおすすめします。

② 入社時の交付タイミングを明確にする

労働条件通知書は、労働契約の締結に際して交付することが求められています。実務では、内定後から入社日までの間に交付し、遅くとも入社当日には本人の手元に渡っている状態にしておくのが安心です。

  • 書面を渡すだけでなく、賃金や労働時間など本人が誤解しやすい項目は口頭でも補足説明する
  • 雇用契約書を兼ねる場合は、内容を確認したうえで署名・押印してもらう時間を入社手続きの中に組み込んでおく

③ 雇用形態の転換・条件変更時は再交付する

パートから正社員への転換、契約更新、勤務地や業務内容の変更など、労働条件に変更が生じるタイミングでは、改めて労働条件通知書(および雇用契約書)を交付し直す必要があります。「口頭で伝えたから大丈夫」と済ませてしまうと、後々の認識の齟齬やトラブルの原因になりやすいため、条件変更があった際は必ず書面を更新するというルールを社内に定着させておくと安心です。

④ 書式の見直しタイミングを決めておく

労働条件の明示ルールは法改正の対象になりやすい分野です。毎年決まった時期(採用シーズン前など)に、自社の労働条件通知書・雇用契約書の書式を見直す機会を設けておくと、法改正への対応漏れを防ぎやすくなります。見直しの際は、自己判断だけで進めず、社会保険労務士など専門家に最新の様式を確認してもらうと安心です。

まとめ

  • 労働条件通知書は会社から労働者への一方的な明示、雇用契約書は双方合意の契約書という違いがある
  • 実務では両方の要素を1枚にまとめた兼用書式もよく使われている
  • 明示すべき労働条件の項目は、最新の様式で定期的に確認する
  • 交付タイミングは入社日までを基本とし、条件変更時には必ず再交付する
  • 書式の見直しは年に一度など定期的なタイミングを決めて行う

労働条件通知書と雇用契約書は、似ているようで役割が異なる書類です。違いを正しく理解したうえで自社に合った運用を選び、入社時の手続きフローに組み込んでおくことが、後々のトラブル防止につながると感じています。

※本記事は一般的な情報の紹介を目的としており、個別の法解釈や様式については社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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