同じChatGPTやClaudeを使っているはずなのに、隣の席の同僚の方が明らかに良い回答を引き出している——そんな場面に出くわしたことはないでしょうか。私自身、最初は思いついたことをそのまま入力するだけで、期待した答えが返ってこず「AIってこんなものか」と感じていた時期がありました。
生成AIは、聞き方(プロンプト)次第で回答の質が大きく変わります。この記事では、総務の実務で生成AIを使う中で効果があったプロンプトの型を、ビフォー・アフターの実例とコピペで使えるプロンプト全文つきで整理します。
※2026年8月更新:ビフォー・アフターの実例、コピペで使えるプロンプト集、やりがちな失敗を追加して大幅に加筆しました。記事内の社名・数値等はすべて架空のサンプルです。
「いい回答」が返ってこないときの共通パターン
思うような回答が得られないとき、多くの場合は聞き方が漠然としすぎています。「議事録をまとめて」「規程の文案を作って」とだけ伝えると、AIはこちらの意図を推測するしかなく、無難で当たり障りのない回答になりがちです。
考えてみれば、これは新しく入った部下への仕事の頼み方と同じです。背景も条件も伝えずに「いい感じにやっておいて」と頼めば、期待とずれた成果物が返ってくるのは当然で、AIも同じだと気づいてから、私のプロンプトは大きく変わりました。「何を、誰のために、どんな形で」出してほしいかが具体的であるほど、実務で使える回答が返ってきます。
実例:同じ依頼でも、聞き方でここまで変わる
健康診断の案内文を作る場面を例に、ありがちな頼み方と、型に沿った頼み方を比べてみます。
「健康診断の案内文を作って」とだけ頼むと、返ってくるのは丁寧だけれど長すぎる、どこの会社にも当てはまりそうな文章です。期間も予約方法も入っていないので、結局ほぼ全部書き足すことになり、「これなら自分で書いた方が早い」となりがちです。以前の私はここでAIに見切りをつけかけていました。

「○ 型に沿った頼み方」を文章にすると、こうなります。そのままコピーして、自社の内容に置き換えて使ってください。
あなたは従業員300名のサービス業で働く総務担当者です。 全社員向けに定期健康診断の案内を出します。社内掲示用の案内文を作ってください。 条件: ・受診期間は10月1日〜10月31日、会場は○○健診センター(予約制) ・予約は希望日を総務までメールで連絡 ・持ち物は健康保険証と事前配布の問診票 ・受診時間は勤務時間扱いであることを注記する 出力形式: タイトル+短い本文+箇条書きで、A4半分程度に収まる分量
これで返ってくるのは、たとえばこんな案内文です。

もちろん日付や会場名の確認は必要ですが、「ゼロから書く」が「確認して直す」に変わるだけで、体感の負担はまったく違います。一行プロンプトとの差は、この「そのまま使える度合い」に表れます。
プロンプトの型:5つの要素
上の例で使った要素を分解すると、次の5つです。毎回すべて埋める必要はありませんが、「回答がいまいちだな」と感じたら、足りない要素を追加してみてください。
① 役割・立場を指定する
「あなたは総務部で就業規則を扱うベテラン担当者です」のように、AIに担ってほしい役割を先に伝えると、その立場にふさわしい語彙や視点で回答してくれます。労務系の相談なら「社会保険労務士の視点でチェックしてください」と頼むと、注意すべき論点の拾い方が変わってくる印象があります。
② 背景・前提条件を伝える
「従業員300名程度のサービス業」「就業規則は変更せず運用ルールだけで対応したい」など、前提となる状況や制約を先に伝えておくと、実態に合わない一般論ではなく、こちらの状況に即した回答になります。会社の規模と業種を一言添えるだけでも、回答の現実味は大きく変わります。
③ 依頼は動詞まで具体的に
「まとめて」より「表にまとめて」、「考えて」より「案を3つ出して、それぞれの長所・短所も添えて」。依頼の動詞を具体的にするだけで、返ってくるものの輪郭がはっきりします。逆に「いい感じにして」のような曖昧な依頼は、AIが一番苦手とするところです。
④ 条件・制約を箇条書きで渡す
盛り込んでほしい情報、変えてはいけない部分、避けてほしい表現などは、文章に混ぜ込むより箇条書きで渡す方が確実に守られます。上の健康診断の例のように「条件:」として列挙するのが、私の定番の書き方です。
⑤ 出力形式を指定する
「箇条書きで5つ」「表形式で」「上司に説明するための3行サマリーを最初につけて」など、欲しいアウトプットの形式まで指定すると、そのまま資料に転用しやすくなります。形式を指定しないと長い説明文が返ってきて、結局こちらで整形し直す手間が発生しがちです。
なお、5要素すべてを毎回そろえる必要はありません。迷ったら、まず「③依頼を具体的に」と「⑤出力形式」の2つだけ意識してみてください。この2つを押さえるだけでも、回答の使い物になる率は目に見えて上がります。慣れてきたら役割や背景を足していく、という順番で十分です。
一発で決めない:たたき台を対話で詰める
5要素を埋めても、一度で完璧な回答が返るとは限りません。むしろ「まずたたき台を出させて、対話で仕上げる」方が、結果的に一番早く目的の形にたどり着けます。私がよく使う修正指示はこんな感じです。
- 「全体的にもう少し柔らかい表現にしてください」
- 「箇条書きの3つ目だけ、もう少し具体的にしてください」
- 「タイトル案を5つ出してください」
- 「この内容を、今度は新入社員にもわかる言葉で書き直してください」
最初の一往復で満足のいく答えを求めすぎないこと。これが生成AIと付き合ううえで、一番大事な感覚だと思っています。
コピペで使える型:業務別3本
私が実際に使っている型を、そのまま使える形で3本載せておきます。かっこ内を自社の内容に置き換えてください。
規程・ルールのたたき台
あなたは総務担当者です。(在宅勤務規程)を新設したいので、まず骨子を作ってください。 ・章立ては「目的」「適用範囲」「申請手続」「費用負担」の4章 ・各章に入れるべき項目を箇条書きで ・従業員(300名のサービス業)で、就業規則本体は変更しない前提 ・条文の形にはせず、検討用の骨子にとどめる
メール文面のトーン調整
以下のメール文面を、依頼内容は明確に保ったまま、角が立たない丁寧な表現に書き直してください。 宛先は(取引先の担当者)です。どこをどう変えたかも、最後に簡単に添えてください。 (ここに原文を貼り付け)
上司への報告用サマリー
以下の資料を、上司への口頭報告用に3行で要約してください。 1行目に結論、2行目に理由や根拠、3行目にこちらが取るべき次のアクションを入れてください。 (ここに資料の内容を貼り付け)
実際にやりがちな失敗3つ
① それらしい嘘をそのまま信じる
一番危ないのがこれです。法令の条文番号や助成金の金額など、AIは間違った内容を自信満々に答えることがあります。法令・数値・固有名詞は必ず原典(厚労省サイトや官報など)で確認する。プロンプトに「不確かな場合は、不確かであると明記してください」と入れておくのも予防になります。
② 否定形の指示は効きにくい
「専門用語を使わないで」より「新入社員にもわかる言葉で」。「長くしないで」より「300字以内で」。経験上、「〜しないで」より「〜して」の形に言い換えた方が、指示は確実に守られます。
③ 条件を盛り込みすぎる
丁寧に書こうとするあまり条件を10個も20個も並べると、かえって一部が無視されます。条件は5個程度に絞り、それ以上は「たたき台→対話で追加」の流れで伝える方が、結果的にすべて反映されやすいです。
うまくいったプロンプトは「資産」としてストックする
プロンプトは使い捨てにせず、うまくいったものをテキストファイルに貯めておくのがおすすめです。私は「案内文」「規程骨子」「要約」のように用途別に貯めていて、次に同じ場面が来たら穴埋めするだけで済むようにしています。
管理の仕方は凝らなくて大丈夫です。メモ帳1枚に「■案内文」「■規程骨子」と見出しを付けて貼っていくだけでも十分機能します。ポイントは、貼り付ける前に日付や固有名詞を(受診期間)(会社規模)のような穴埋め形式に置き換えておくこと。これだけで、次回使うときの手直しがほぼゼロになります。
この「型のストック」は、毎月の定型業務と組み合わせると特に威力を発揮します。Excel集計や議事録作成の記事で紹介した「手順書ごと覚えさせる」やり方も、要は業務単位のプロンプト資産です。貯まってくると、チーム内で共有して引き継ぎ資料代わりにもなります。
なお、プロンプトに実在の個人名や非公開の数値を入れる場合は、社内のAI利用ルールの範囲内かを必ず確認してください。ルールがまだ無い職場は、生成AIの社内利用ルール・ガイドラインの作り方も参考にしてみてください。
よくある質問
Q. 毎回こんなに長いプロンプトを書くのは面倒では?
毎回ゼロから書くのは私も面倒です。だからこそ型のストックが効きます。2回目以降は穴埋めだけ、同じ会話の中なら「さっきと同じ形式で、対象を○○に変えて」の一言で済みます。
Q. 敬語で丁寧に書いた方が良い回答になりますか?
敬語は不要です。箇条書きと簡潔な指示の方が、むしろ意図が正確に伝わります。人への依頼文ではなく「仕様書を書く」感覚が近いと思います。
Q. プロンプトが「うまくいった」かどうかは、どう判断すればいいですか?
私は「手直しにかかった時間」で判断しています。返ってきたものを3分以内の修正で使えたら合格、10分以上直したら型の見直しサイン、という感覚です。直した内容(足りなかった条件)を次回のプロンプトに反映すれば、型は自然と育っていきます。
Q. ChatGPTとClaudeで型を変える必要はありますか?
この記事の型はどちらでもそのまま使えます。細かい得手不得手はありますが、聞き方の基本は共通です。ツールを乗り換えても資産が無駄にならないのも、型をストックしておく利点です。
どの作業から手を付けるべきか、23項目で判定できます
毎月やっている作業を選ぶだけで、仕組みにできるものと手作業のまま残るものを判定するツールを置いています。判定の4つの軸もそのまま表示するので、納得できなければ読み替えてもらって構いません。入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。
まとめ
- 漠然とした聞き方では、AIは無難で当たり障りのない回答しか返せない
- 「役割・背景・依頼・条件・出力形式」の5要素を意識すると回答が実務レベルになる
- 一発で完璧を求めず、たたき台を対話で詰めていく方が結果的に早い
- 指示は否定形より肯定形、条件は5個程度に絞る
- うまくいったプロンプトはストックして、自分専用の型を育てていく
プロンプトは、正解が一つに決まっているものではなく、自分の業務に合わせて育てていくものだと感じています。まずはこの記事の型を1つコピーして、明日の業務で試すところから始めてみてください。
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