オフィス移転プロジェクトの進め方、総務が最初にすべきこと

総務の仕事術

「来年、本社を移転することになりました。進め方については総務にお任せします」——ある日の朝礼で、そう告げられたときのことを今でも覚えています。それまで机の配置換えや備品の入れ替えくらいしか経験がなかった私にとって、「オフィス移転プロジェクトの責任者」という肩書は、正直なところずしりと重いものでした。

慌てて社内外の資料を集めてみると、オフィス移転というのは想像していた以上に息の長いプロジェクトだということが分かってきました。物件探しや内装工事はもちろん、現オフィスの賃貸借契約の解約手続き、原状回復工事、各種届出、什器の廃棄・移設、社内への周知まで、関わる範囲が総務業務のほぼ全領域に及びます。しかも多くの会社にとって数年に一度あるかないかの出来事ですから、「前回どうやって進めたか」を知る人がほとんど残っていない、というのもよくある話ではないでしょうか。

とはいえ、右も左も分からないまま走り出してしまうと、後になって「あのとき確認しておけばよかった」という後悔が必ず出てきます。今回は、実際にオフィス移転プロジェクトに総務担当として関わってきた立場から、プロジェクトの立ち上げ段階、つまり「最初にすべきこと」に絞って整理してみたいと思います。

オフィス移転、最初に固めておきたい4つのこと

移転の目的をはっきりさせ、オフィスの要件に落とし込む

意外と後回しにされがちなのが、「なぜ移転するのか」を言語化することです。人員増加への対応なのか、固定費であるオフィスコストの見直しなのか、あるいはテレワーク定着後の座席数と出社率のバランスを見直すためなのか、目的によって必要な面積も立地条件もまったく変わってきます。移転理由を整理しないまま物件探しから始めてしまうと、後になって「そもそも何のための移転だったか」がぶれてしまい、部署ごとの要望調整で収拾がつかなくなりがちです。まずは経営層や関係部署にヒアリングを行い、移転の目的、必要な席数・面積感、最寄駅からの距離や周辺環境といった立地条件を文書として整理しておくことをおすすめします。

現オフィスの賃貸借契約を確認し、逆算でスケジュールを組む

移転の目的が固まったら、次にすべきは現オフィスの賃貸借契約書の確認です。特に注意したいのが「解約予告期間」です。オフィスの賃貸借契約は解約の6か月前予告などの規定になっていることが多く、この期間を把握しないまま動いてしまうと、想定していた時期に移転が間に合わなくなったり、逆に無駄な賃料を払い続けたりすることになりかねません。あわせて原状回復義務の範囲(スケルトン戻しが必要なのか、内装をそのまま残せるのか)も確認しておく必要があります。原状回復工事は貸主指定の業者による施工を求められるケースもあり、費用も工期も想定より膨らみやすい部分です。ここまで確認できたら、退去日、原状回復工事、新オフィスの内装工事・引っ越しという順番で、逆算しながらスケジュールを組み立てていきます。

届出や郵便物転送、什器の廃棄・移設方針を早めに洗い出す

移転が具体化してくると、日々の業務に追われて後回しになりがちなのが各種届出や手続きです。取引先への住所変更の案内、登記簿上の本店・支店所在地の変更、税務署や労働基準監督署、年金事務所といった行政機関への届出、郵便物の転送手続き、名刺や封筒など印刷物の刷り直しなど、洗い出してみると項目数は意外と多くなります。加えて什器や備品についても、「何を新オフィスに持っていき、何を廃棄するのか」の方針を早い段階で決めておかないと、移転直前になって「処分してよいか判断がつかないものが大量に残っている」という状況に陥りがちです。リスト化したうえで各部署に確認を依頼するタイミングを、プロジェクトの初期段階で決めておくと、後々の作業がぐっと楽になります。

社内周知のタイミングと、部署ごとの要望収集を計画的に進める

オフィス移転は総務だけで完結する話ではなく、実際にそこで働く社員一人ひとりに影響する話でもあります。社内への周知が遅れると「知らないうちに話が進んでいた」という不満につながりやすい一方、あまり早い段階で詳細まで発表してしまうと、まだ確定していない情報に社員が振り回され、問い合わせ対応に追われることにもなります。目安としては、大枠の方針が固まった時点で一報を入れ、座席レイアウトや収納量など部署ごとの要望を収集する時期を、あらかじめ計画に組み込んでおくとよいでしょう。要望を聞くタイミングが遅れると、レイアウト設計のやり直しが発生し、スケジュール全体に影響してしまいます。

総務だけで抱え込まないために意識したいこと

オフィス移転を進めていくと、総務だけでは意思決定できない場面が次々に出てきます。不動産仲介会社や内装工事業者、什器メーカー、通信・LAN工事の業者など、関わる社外パートナーも多く、それぞれの窓口対応だけでもかなりの時間を取られてしまいます。私自身の経験では、プロジェクトの早い段階で「誰が何を決めるのか」という役割分担と、社内からの問い合わせを一元的に受け付ける窓口を決めておくことが、後の混乱を防ぐ一番の近道でした。すべてを総務が抱え込むのではなく、経営層の判断が必要な事項、各部署に確認してもらう事項、外部業者に任せる事項を早めに切り分けておくと、移転までの数か月を落ち着いて進めることができます。

  • ①移転の目的を整理し、必要な面積・立地条件を固める
  • ②現オフィスの賃貸借契約(解約予告期間・原状回復義務)を確認し、逆算でスケジュールを組む
  • ③届出・郵便物転送・什器の廃棄/移設方針を早い段階で洗い出す
  • ④社内周知のタイミングと部署ごとの要望収集を計画的に進める
  • ⑤社内外の役割分担を早めに決め、総務だけで抱え込まないようにする

オフィス移転は、総務にとって数年に一度の大きなプロジェクトだからこそ、最初の設計をどれだけ丁寧にできるかで、その後の数か月の忙しさが大きく変わってきます。この記事が、これから移転プロジェクトに向き合う総務担当の方にとって、最初の一歩を踏み出す際の参考になれば幸いです。

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