「この出張旅費規程、上限金額が違いますよね。私が持っている版だと日当3000円なんですが、経理さんが見せてくれた版だと2500円になっていて…」少し前、他部署の担当者からこう聞かれて、返答に困ったことがあります。調べてみると、社内のクラウドストレージには改定後の最新版が置かれていた一方で、その担当者が普段使っていたのは、以前印刷して配布された古い版だったのです。
恥ずかしながら、この手の「どれが最新版か分からない」問題は、私の職場でも一度や二度ではありませんでした。就業規則本体はさすがに総務がきちんと管理していても、旅費規程や慶弔見舞金規程、テレワーク規程といった個別の規程・マニュアルは、作成した部署がそれぞれのやり方で保管しているケースが少なくありません。結果として、最新版と旧版が社内のあちこちに混在し、誰が見ても「これが正」と言い切れる状態になっていない、ということが起こりがちです。
就業規則そのものの見直しタイミングや、コンプライアンス研修の内容については、これまでも別の記事で触れてきました。今回は少し視点を変えて、規程やマニュアルという「文書」そのものを、総務としてどう管理し、どう保管しておくべきかというテーマで、実務上気を付けているポイントを整理してみます。
規程集を総務で一元管理する体制をつくる
なぜ規程はバラバラになりやすいのか
規程やマニュアルは、必ずしも総務だけが作成するものではありません。安全衛生に関するルールは製造部門が、情報セキュリティに関する取り決めは情報システム部門が、というように、専門性の高い内容ほど、その部署が主体となって作成・改定することが多いはずです。それ自体は自然なことですが、作成した部署がそれぞれ別の場所に保管し、様式もバラバラのまま更新を重ねていくと、次第に「全体としてどんな規程が何本あるのか」を誰も把握できなくなってしまいます。
一覧化と保管場所の一本化
そこで私の職場では、まず社内に存在する規程・マニュアル類を洗い出し、一覧表にすることから始めました。規程名、所管部署、制定日、直近の改定日を並べただけの簡単な表ですが、これを作るだけでも「同じテーマの規程が複数存在していた」「担当部署が異動で変わってから誰も更新していなかった」といった実態が見えてきます。そのうえで、原本や最新版のデータは、部署ごとの管理に任せきりにせず、総務が事務局となって文書管理システム上の決まったフォルダに集約する運用に切り替えました。作成・改定自体は各部署に任せつつも、「最終的にどこに置くか」だけは総務が窓口になる、というイメージです。
この一本化を進めるうえで意外と効いたのが、フォルダの階層をあまり細かく分けすぎないことでした。部署ごとにフォルダを分けてしまうと、結局その部署の担当者しか場所を把握できず、以前と同じ状態に逆戻りしてしまいます。「規程・マニュアル」という大きな箱の中に、種類ごとの少ないフォルダで整理し、あとは一覧表からリンクをたどれば誰でもたどり着けるようにしておくと、異動や担当変更があっても運用が途切れにくくなると感じています。
改定履歴を残し、最新版だけが使われる仕組みにする
いつ・誰が・何を変えたかを記録する
規程を保管場所だけ一元化しても、改定のたびに本文が上書きされてしまっては、以前の内容と何がどう変わったのかが分からなくなります。そこで、規程本文とは別に、簡単な改定履歴表を各規程にひとつずつ添付するようにしました。改定日、改定箇所、改定理由、改定を行った部署・担当者名を1行ずつ記録していくだけのシンプルなものですが、後から「なぜこの条文が今の内容になったのか」を確認したいときに、非常に役立ちます。
規程間の矛盾を定期的にチェックする
複数の規程を並行して運用していると、片方だけを改定した結果、別の規程や就業規則本体との間で内容が食い違ってしまうことがあります。たとえば、慶弔休暇の日数を個別規程で見直したのに、就業規則側の記載が古いままになっている、といったケースです。私の職場では、年に一度、規程の一覧表を見ながら、関連する規程同士の記載内容に矛盾がないかをまとめて確認する時間を設けるようにしました。改定履歴が残っていれば、「いつどちらを直したか」がすぐに分かるため、突き合わせの作業もそれほど負担にはなりません。
最新版の置き場所とアクセス権限を整理する
最後に気を付けたいのが、最新版以外のファイルが誤って使われないようにすることです。改定前の版をうっかり残したフォルダや、個人のパソコンに保存された古いコピーが、いつの間にか現場で使われてしまうことは珍しくありません。そのため、最新版を置く場所は一本化したうえで、そこへのアクセス権限を必要な範囲に絞り、旧版は別の「保管用」の領域に移して通常は目に触れないようにしています。あわせて、規程の一覧表に最新版へのリンクを載せておくと、社員が「どれを見ればいいか」で迷うことも減ります。
ここまでの内容を簡単にまとめると、次のようになります。
- ①規程・マニュアルを洗い出して一覧化し、総務が保管場所を一元管理する
- ②改定のたびに、いつ・誰が・何を変えたかを履歴として残しておく
- ③関連する規程同士の内容に矛盾が生じていないか、定期的に突き合わせる
- ④最新版の置き場所とアクセス権限を整理し、古い版が使われないようにする
規程やマニュアルは、一度作ってしまうと「作った時点がゴール」になりがちですが、実際にはそこからが運用の本番です。地味な作業に見えますが、最新版がどれか分からなくて現場が迷う、という状況を減らせるだけでも、総務としての一元管理には十分な意味があると感じています。
どの作業から手を付けるべきか、23項目で判定できます
毎月やっている作業を選ぶだけで、仕組みにできるものと手作業のまま残るものを判定するツールを置いています。判定の4つの軸もそのまま表示するので、納得できなければ読み替えてもらって構いません。入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。


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