私傷病休職・復職の手続きと総務が整えるべき制度

人事・労務

「実は先週から入院していて、しばらく出社できそうにありません」——ある日突然、部下からそんな連絡を受けたことがあります。診断書には数か月単位の療養が必要と書かれており、私は反射的に「休職の規定、うちにあったよな」と就業規則を引っ張り出しました。

ところが、いざ条文を読み返してみると、休職を命じる基準も、休職中に会社へ報告してもらう頻度も、復職の判断方法も、驚くほど曖昧にしか定められていませんでした。前任者の代からほとんど運用実績がなく、「困ったときに読む条文」のまま何年も放置されていたのだと思います。結局そのときは、本人や産業医、上司と相談しながらその場その場で判断することになり、後から振り返ると綱渡りのような対応だったと反省しています。

私傷病(業務外の病気やケガ)による休職は、実は法律で導入が義務付けられている制度ではありません。だからこそ「自社の実情に合わせてきちんと設計しておかないと、いざというときに機能しない」という、地味だけれど重要な総務の仕事だと痛感しました。今回は、休職から復職までの一連の手続きと、総務としてあらかじめ整えておくべきポイントを整理してみます。

私傷病休職の制度設計で押さえておきたいこと

休職はあくまで会社が任意に定める制度

私傷病休職は、労働基準法上どの会社にも導入が義務付けられている制度ではありません。休職を設けるかどうか、対象者の要件、休職できる期間の長さなどは、各社が就業規則の中で自由に定める領域です。ただし、いったん制度として設ける以上は、労働基準法上の「相対的必要記載事項」に該当するため、就業規則に明文化したうえで労働基準監督署へ届け出る必要があります。「なんとなく口頭で運用している」状態のままにしておくのは、法的にもリスクがあると理解しておく必要があります。

欠勤から休職への切り替えラインを決めておく

実務上の標準的な流れとしては、まず一定期間の欠勤を認め、その欠勤が一定日数を超えて続く場合に、主治医の診断書提出を求めたうえで正式に休職を命じる、という二段階の設計が一般的です。「何日欠勤したら休職に切り替えるか」「診断書はどのタイミングで求めるか」という具体的な日数は会社の規模や就業規則によって異なりますが、この境目をあらかじめ明確にしておかないと、現場の管理職が独自の判断で対応してしまい、後から不公平感やトラブルにつながりかねません。

通算規定を設けておかないと制度が機能しなくなる

意外と見落とされがちなのが、欠勤の「通算規定」です。休職期間の上限を定めていても、いったん出社してまた休むということを繰り返された場合に、その断続的な欠勤日数を通算してカウントする規定がないと、休職期間の上限がいつまでも到来せず、制度そのものが実質的に機能不全に陥ってしまいます。復職と欠勤を短期間で繰り返すケースは決して珍しくないため、「一定期間内に欠勤を繰り返した場合は通算する」といった規定を、休職制度を設計する段階からセットで盛り込んでおくことをおすすめします。

休職中の運用と復職判断で総務が整えるべき体制

休職中の連絡・報告ルールを決めておく

休職期間中は本人に療養へ専念してもらうことが大前提ですが、会社として全く状況を把握できないままでは、復職時期の見通しも立てられません。月1回程度など、無理のない範囲で治療の経過や生活リズムについて報告してもらう規定を設けておくと、会社側も本人の状況に応じた準備がしやすくなります。連絡先の担当窓口を一本化しておくことも、本人にとっても総務にとっても負担を減らすポイントです。

復職の可否は主治医の診断書だけに頼らず、フォロー体制も含めて設計する

復職の判断にあたっては、主治医の診断書の提出を求めるのが基本ですが、主治医は必ずしも職場の業務内容まで詳しく把握しているわけではありません。そのため、必要に応じて会社が指定する医療機関を受診してもらい、実際の業務に耐えられる状態かどうかを客観的に確認できる体制を整えておくことが望ましいといえます。誰が最終的に復職の可否を判断するのか(人事担当なのか、産業医の意見を踏まえた会社なのか)についても、あらかじめ就業規則上で明確にしておくとよいでしょう。また、復職して終わりではなく、復職直後は業務量や勤務時間を段階的に調整するなど、いわゆる「慣らし期間」を設ける会社も少なくありません。再発防止の観点からも、復職後しばらくは上司や産業医と連携して本人の様子を確認する仕組みを、休職制度とあわせて用意しておくと安心です。

  • 私傷病休職は法律上の義務ではなく、就業規則で任意に定める制度である
  • 制度化する場合は相対的必要記載事項として労働基準監督署への届出が必要になる
  • 欠勤から休職への切り替えラインをあらかじめ明確にしておく
  • 断続的な欠勤を通算する規定がないと、休職制度が機能しなくなるおそれがある
  • 休職中の報告ルールと、復職判断の基準・体制を事前に整えておく

休職・復職の対応は、実際に誰かがその制度を使う場面になって初めて、規定の粗さに気づかされることが多いように思います。「まだ誰も使ったことがないから」と後回しにせず、一度落ち着いたタイミングで自社の就業規則を見直しておくことが、いざというときの総務の安心につながるのではないでしょうか。

※本記事は一般的な情報の紹介を目的としており、個別の判断については社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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