「うちも、そろそろBCP作っておいてくれない?」ある日、上司からそう声をかけられました。総務としてひととおりの防災訓練や避難経路の掲示くらいは経験していたものの、「事業継続計画」と正式に名前がつくと、とたんに何から手をつければいいのか分からなくなったのを覚えています。
とりあえず参考になりそうな資料を探してみると、出てくるのは分厚いガイドラインや、専門用語がずらりと並んだコンサル会社の解説ばかりでした。「重要業務の目標復旧時間を設定し…」と書かれていても、正直、自社にそのまま当てはめられるイメージが湧きません。総務担当の方なら、同じような壁にぶつかった経験がある方も多いのではないでしょうか。
ただ、実際に手を動かしてみると、総務が最初にすべきことは、難しい専門知識よりも「社内の実情を整理すること」に近いと感じました。いきなり計画書の体裁を整えようとせず、まず社内で何が決まっていて何が決まっていないのかを棚卸しするところから始めれば、案外一歩ずつ進められるものだと分かってきたのです。今回は、BCPづくりに着手した際に、総務としてまず取り組んだ順序と、そのなかで特に総務が中心になりやすいポイントを整理してみます。防災訓練の実施や内部通報制度の整備とはまた違う、危機管理・事業継続の観点からの話です。
BCP策定の全体像を先につかんでおく
BCPづくりは、一般的に「基本方針の策定」「重要事業・優先業務の洗い出し」「被害想定・リスク分析」「事前対策の検討」「発動基準・体制の整理」「訓練・見直し」という流れで進めるとされています。最初からすべてを完璧に仕上げようとすると手が止まってしまうので、まずは全体の地図を頭に入れたうえで、総務として着手しやすいところから手をつけるのがよいと感じました。
①基本方針をひとことで言えるようにする
最初に整理したのは、「何のためにBCPをつくるのか」という基本方針でした。従業員の安全確保を最優先とするのか、顧客への影響を最小限にすることを重視するのか、優先順位によってその後の対策の中身が変わってきます。ここを経営層に確認せずに進めると、あとから「そこまで手厚くしなくていい」「そこは絶対に守ってほしい」と方向性がぶれてしまうため、最初の段階で経営層とすり合わせておくことをおすすめします。
②重要事業・優先業務を洗い出す
次に取り組んだのが、災害時に「止めてはいけない業務」と「一時的に止めても大きな支障が出ない業務」の仕分けです。すべての業務を平時と同じように続けることは現実的ではないため、各部署に簡単なヒアリングをして、優先度の高い業務から順に並べていきました。総務単独で決められる話ではないので、関係部署を巻き込みながら進める意識が必要だと感じています。
③被害想定・リスク分析はざっくりで構わない
地震、水害、感染症の流行、システム障害など、自社の事業内容や拠点の立地に応じて想定されるリスクを洗い出す段階です。この段階で被害の規模や損失額を細かく数値化しようとすると時間がかかりすぎるため、最初は自社の事業内容・拠点数に応じて、想定されるリスクの種類と大まかな影響範囲を整理する程度でよいと考えています。精緻な分析は、体制が整ったあとで見直せば十分です。なお、この先には事前対策の検討やBCP発動基準・体制の整理、訓練・見直しといった段階も続きますが、これらは①〜③の土台があってはじめて具体的に検討できる部分だと感じています。焦らず順番に積み上げていくくらいの気持ちで臨むのがよさそうです。
総務が担う「初動対応」の中心的な役割
BCPの検討を進めるなかで実感したのは、災害発生直後の初動対応において、総務が果たす役割の大きさです。方針や優先業務の整理は関係部署と一緒に進める一方で、発生直後の初動については、総務が中心となって仕組みをつくる場面が多くなります。
安否確認の仕組みをつくる
まず着手したのは、従業員の安否確認の仕組みです。災害が発生した際、誰が・どの方法で・どのタイミングで安否を確認するのかを決めておかないと、いざというときに現場が混乱します。連絡手段は電話だけに頼らず、複数の手段を用意しておくこと、そして誰が状況を集約するのかをあらかじめ決めておくことがポイントだと感じました。
拠点・設備の被害状況を把握する体制
次に整理したのが、事業拠点や設備の被害状況をどう把握するかという体制です。拠点が複数ある場合、本社の総務だけで現地の状況をすべて把握するのは難しいため、各拠点の責任者から本社へ報告する流れをあらかじめ決めておくようにしました。報告のフォーマットを簡単なものにしておくと、混乱時でも記入しやすくなります。
備蓄品の管理
また、非常食や飲料水、簡易トイレなどの備蓄品の管理も、総務が担うことの多い業務です。数量や消費期限を定期的に確認する担当と時期を決めておかないと、いざというときに使えない、という事態にもなりかねません。備蓄する量や品目についても、自社の事業内容・拠点数に応じて必要な範囲を検討するという姿勢で十分だと思います。
ここまで整理してみると、BCPづくりの初期段階で総務が最初にすべきことは、次のように整理できると感じました。
- 経営層と基本方針をすり合わせ、守るべき優先順位を明確にする
- 関係部署を巻き込みながら、重要事業・優先業務を洗い出す
- 被害想定・リスク分析は、自社の実情に応じて大まかに整理するところから始める
- 安否確認の仕組みを、複数の連絡手段を用意したうえで決めておく
- 拠点・設備の被害状況を把握するための報告ルートとフォーマットを整えておく
- 備蓄品の数量・消費期限を定期的に確認する担当と頻度を決めておく
BCPというと壮大な計画書を思い浮かべがちですが、総務がまず取り組めるのは、こうした身近な仕組みづくりの積み重ねだと感じています。完璧な計画を一度で作ろうとせず、できるところから手をつけて、少しずつ見直していく。そんな姿勢で向き合っていければと思います。


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